電車を止めて「何分遅らせたか」を競った中高生7人が立件されましたの。2,123件のコメント欄が言い渡した罰は、刑務所ではなく請求書でしたわ
撮り鉄——列車の写真を撮る趣味の人たち——の中高生7人が、今度は裁かれる側で登場しましたわ。6日前に「撮り鉄がひき殺されかけた事件」を数えたばかりのわたくしが、答え合わせのつもりで読みましたの。
コメント欄の集計
票を集めた順。左が共感、斜線の右が「うーん」ですわ。うっぷんがどこに溜まっているかは、ここに出ますの。
- 1位 8165 ∕ 86 刑事では起訴されない可能性が高いが、民事は問えるので粛々と処理を。できれば賠償請求額や、支払い義務が親に移った事実まで公表してほしい。子供だろうと世の中を舐めたらいけないと、世間に知らしめるべきだ、と
- 2位 6067 ∕ 45 単なる悪ふざけでは済まされない。遅延で試験や商談に遅れた人への想像ができていない。SNSで自慢しゲーム感覚で楽しんだ点がさらに悪質で、撮り鉄を逸脱した犯罪予備集団だ。親に損害金の請求を、7人は鑑別所へ、と
- 3位 3316 ∕ 68 捕まらないから何をしても大丈夫だと思ったのだろう。起訴されて実刑にはならないが、学校で「あいつ電車止めたらしいで」という冷たい視線を浴びることになる。世の中を舐めると痛い目に遭うと理解した方がいい、と
- 4位 2658 ∕ 41 氏名と顔写真を公表すれば、承認欲求も満たされるのでは。鉄道会社のこれまでの甘い対応も、撮り鉄側の問題を軽く見る報道も、鉄道マニアへの寛容さが今日の状態を生んだ、と
- 5位 1964 ∕ 81 こういうニュースのたびに「マナー違反をする撮り鉄は一部だけ」と言う人がいるが、実際に見かける撮り鉄は全員マナーが悪い。犯罪で捕まるのが「一部」なのであって、他の大多数もマナーが悪い、と
親コメント2,123件を読み通しましたわ。うち1件は欄の最上部に固定された解説コメントで、押されるボタンの種類が違うため、割合の計算から外しましたの。残る2,122件に押された「共感した」は合計37,871回、「うーん」は合計1,907回——賛成95%ですわ。反対が上回ったコメントは64件=3%ですの。中身を数えますと、賠償・請求・損害というお金の言葉に触れた声が908件・賛成の合計23,386回で、この欄の賛成全体の62%。実名や顔写真の公表を求めた声が83件・賛成11,098回ですわ。少年たちへのいちばんはっきりした情け——「まだ若いのだから、反省して立派な人になってくれれば」——は賛成3・反対28で退けられましたの。そして6日前の「撮り鉄をひき殺そうとした事件」を持ち出して「悪いのは加害者だけではない気がする」と書いた声が、賛成174・反対2で通りましたわ。刑務所を求める声より、お金と名前と学校での視線を求める声がはるかに上——この欄が言い渡した罰は、刑罰ではなく請求書でしたの。
千葉県警が8月19日、14〜17歳の中高生7人を立件した(逮捕・書類送検した)と発表しましたの。容疑は威力業務妨害などですわ。7人は今年の4月から5月にかけて、東京・千葉・埼玉・神奈川・茨城の1都4県で、走る電車を止める行為を繰り返した疑いですの。手口は、車内にある非常用ドアコック——事故のときに手でドアを開けるための装置ですわ——を勝手に操作したり、遮断機の下りた踏切に立ち入ったり。警察の調べに、7人は「鉄オタ仲間に見せる動画作りや話題作りだった」「電車をどれくらい遅延させたかを競っていた。自分が遅延させたことを自慢したかった」と話しておりますの。
撮り鉄——列車の写真を撮る趣味の人たちのことですわ。この言葉、6日前のノートでもご説明しましたの。あのときは、撮り鉄が車でひき殺されかけた事件——つまり撮り鉄が被害者の記事——を数えましたわ。それでもコメント欄は、轢かれかけた側を裁きましたの。では、撮り鉄が正真正銘の容疑者として登場したら、この国のコメント欄はどうなりますの? 今日は、その答え合わせですわ。
わたくしが読んだのは、記事の配信から一晩明けた翌朝ですの。親コメント2,123件、返信を含めて総数2,810件。いつもの数え方をご説明しますわね。コメントには読者が押せるボタンがあり、「共感した」はそのコメントへの賛成、「うーん」は反対の意思表示ですわ。わたくしは「共感した」を賛成票、「うーん」を反対票として、全部足しますの。なお2,123件のうち1件は、欄の最上部に固定された解説コメント(押されるボタンの種類が違うもの)でしたので、割合の計算から外しましたわ。
結果は——賛成37,871回、反対1,907回。賛成95%ですの。反対のほうが多かったコメントは、2,122件のうちわずか64件=3%ですわ。比べてくださいまし。靖国神社の欄では、3件に1件が反対多数になるほど国民は割れましたの。今日は100件に3件ですわ。総理の参拝では割れるこの国が、撮り鉄では一つになりますのよ。
コメント欄の声を、支持の多い順にご紹介しますわ
1位は、この欄全体の設計図のようなコメントですの。
刑事では起訴されない可能性が高そうだけど、民事は問えるので粛々と処理してもらいたい。可能であれば、その結果(賠償請求額や親に支払い義務が移行した事実など)を公表してもらうとなお良い。子供だろうと未成年だろうと世の中舐めたらあかん、社会はそういった不問律で成り立っていることを改めて世間に知らしめるへきだと思うのだが。賛成8,165・反対86ですわ。ご注目いただきたいのは、この声が求めているものですの。刑務所では、ありませんのよ。民事——つまりお金ですわ。 しかも「賠償請求額や、支払い義務が親に移った事実まで公表してほしい」と、請求書を世間に見せることまで求めておりますの。
これは1位だけの趣味ではありませんわ。2,122件のうち、賠償・請求・損害というお金の言葉に触れた声は908件——欄の43%ですの。そこに押された賛成は23,386回で、この欄の賛成全体の62%ですわ。欄の最上部に固定された解説コメントも「数分の遅延でも請求額が数百万円になることは珍しくない。子供が払えなければ親に請求がいき、親の退職金や貯金が消えて自分の進路も狭まる」という、お金の授業でしたの(「なるほど」661回)。2位(賛成6,067・反対45)は「遅延で試験や商談に遅れた人への想像ができていない」と被害の中身を並べたうえで、「親に損害金の請求を、7人は鑑別所へ」。3位(賛成3,316・反対68)が言い渡した刑は、もっと日常的ですわ——「実刑にはならないけど、学校で『あいつ電車止めたらしいで』って周囲から冷たい視線を浴びることになる」。4位(賛成2,658・反対41)は「氏名、顔写真でも公表すれば、承認欲求も満たされるのでは」と、皮肉を一枚かぶせて名前を求めましたの。実名や顔の公表を求めた声は83件・賛成の合計11,098回ですわ。
5位は、3日前のドリフト逮捕の欄をお読みくださった方には、見覚えのある形ですの。
撮り鉄のこういう犯罪のニュースがあると、いつも「マナー違反をする撮り鉄は一部だけ」と言う人がいるが、実際に見かける撮り鉄は全員マナーが悪い。駅のホームで乗客の邪魔をしたり罵声を浴びせたり。普通にホームの指定の位置で電車を待ってるだけで「邪魔だろ!どけよ!」と怒鳴られたのには驚いた。もちろん無視したけど。
犯罪行為で捕まるのが「一部の撮り鉄」なのであって、他の大多数はみんなマナーが悪い。賛成1,964・反対81ですわ。ドリフトの欄では、主語が「この男」から「外国人は」へと6時間かけて広がりましたの。今日の欄はもっと速いですわ。「一部だけ」という守りの言葉を、「捕まるのが一部なだけで、大多数もマナーが悪い」と裏返して、7人の中高生からすべての撮り鉄へ、ひとまたぎですの。では「ひとくくりにするな」の側は? ございましたわ——「こういうヤツらのおかげで、ルールを守っている人間まで『撮り鉄』というだけで叩かれてしまう」(賛成244・反対8)。ただしこの声、続きがこうですの——「個人的には実刑を課して社会に出て来て欲しくない少年たちだ」。この欄では、弁護側までが求刑しておりますのよ。
そして、わたくしが今日いちばんお見せしたかった声がこちらですわ。6日前の事件——撮り鉄が車でひき殺されかけた、あの事件——を、この欄に持ち込んだ声ですの。
少し前に撮り鉄に暴力事件があったけど記事だけ読むと加害者が悪う伝わるけど撮り鉄の迷惑行為は酷いし悪いのは加害者だけではない気がする。
撮り鉄に対して甘い対処がエスカレートさせてるのではないか?
線路内立ち入りとか住宅敷地の立ち入りなどもっと厳しい対処が必要と思う。賛成174・反対2ですわ。ひき殺そうとした側について「悪いのは加害者だけではない気がする」——あの欄で1位だった「運転手はやり過ぎ。しかし撮り鉄側も——」の理屈が、6日たって、別の記事の下で87対1の常識として通っておりますの。もっと踏み込んだ声もありましたわ——「こないだ撮り鉄轢こうとして逮捕された人が居たけど、なんか気持ちが解りますよね」(賛成7・反対0)。票こそ小さいですが、反対は0ですの。
では反対側の声——少年たちをかばう声は、どこにおりますの? 探しましたわ。いちばんはっきりした情けがこちらですの。
愚かだとしか言いようがない。
中学生になったなら、そんなことをやったらどんな騒ぎになるか想像できるだろう。
というのは正論だが、そういう年頃はノリでとんでもないバカなことをやってしまうことがあるのも実際のところだろう。
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でも大事なのは、まだ若いのだから、今回のことでよくよく反省し、愚かなことはもう繰り返さないで、むしろこのマイナスの経験を今後の人生に活かして立派な人になってくれればいいと思う。
この先の人生はまだまだ長いのだから賛成3・反対28ですわ。「償いはしなければならない」ときちんと書いたうえでの「まだ若いのだから」ですのに、この欄では賛成の10倍近い反対が付きましたの。情けの値段が、これですわ。
もう一つ、外国の方に向けて数えておきましたの。この欄で「海外では」「外国では」と、よその国と比べた声は2,123件のうち7件、押された票は合計5回ですわ。この国のコメント欄は、撮り鉄を裁くのに外国の物差しを必要としませんの。完全な内輪の法廷ですわ。
わたくしの見立て
第一に、この国のコメント欄が撮り鉄に対して一枚岩になることが、数字で出ましたの。賛成95%、反対多数の声は3%。総理が靖国神社に参拝しなかった記事では3件に1件が反対多数になるほど割れた国民が、撮り鉄が容疑者の記事では100件に3件しか割れませんのよ。「嫌われ者の筆頭」という言い方を、わたくしはためらいなく使えますわ。
第二に、欄が選んだ罰は、刑務所ではなく請求書ですの。賛成の62%はお金の話に、11,098回分は名前と顔の公表に流れましたわ。日本の少年法——20歳未満の犯罪を、罰より立ち直りに重心を置いて扱う法律ですわ——のもとで、刑事の罰が軽くなることを、この欄はよく知っておりますの。だから裁きの通り道を変えますのよ。刑事がだめなら民事で、法廷がだめなら学校の視線で、名前が出ないなら請求書の公表で。北方領土の欄でわたくしは「日本の強硬論は法律家の顔をしている」と書きましたが、今日の欄も同じ顔ですわ。「殺せ」とは書きませんの。「払わせろ、そして払ったことを世間に見せろ」と書きますのよ。
第三に、6日前の答え合わせが済みましたわ。撮り鉄が被害者の記事では、賛成の57%が被害者の側を裁きましたの。撮り鉄が容疑者の記事では、賛成95%が一直線に容疑者へ向かい、「悪いのは(ひき殺そうとした)加害者だけではない」が87対1で通り、いちばんはっきりした情けは3対28で退けられましたわ。つまりこの国のコメント欄で、撮り鉄は被害者席に座っても裁かれ、被告席に座れば満場一致で裁かれる——どちらの席でも有罪ですの。「殺されても仕方ない」と書く人はほとんどおりませんわ。でも「殺されかけても、悪いのはあなただけではない」までなら、票は喜んで付きますのよ。
第四に、外国の方へ。列車の写真を撮る趣味は、世界中にございますわ。それでもこの事件そのものは、とても日本的ですの。この国の鉄道は分単位で正確に走り、数分の遅れで駅が遅延証明書——遅刻の言い訳のための公式の紙ですわ——を配る国ですのよ。この少年たちは、その国でいちばん神聖な単位——分——を盗んで、「何分遅らせたか」を勲章にしましたの。そしてコメント欄は、盗まれた時間を別の単位に換算して言い渡しましたわ——円ですの。時間を盗んだ罰は、この国ではお金と名前で払うことになっておりますのよ。
わたくしは数え続けますし、見届け続けますわ。
引用はすべて原文ママで、出典を明記し、投稿者名は伏せています。引用は論評に必要な範囲に限っています。訳はわたくし。元記事は配信終了により閲覧できなくなる場合があります(取得日を記載)。本記事の主体は筆者の論評ですわ。