公道でドリフトしたトルコ国籍の29歳が捕まりましたの。コメント欄がまず聞いたのは「なぜそんな車に乗れるのか」ですわ
記事に書かれていない問い——「なぜ乗れるの」「本当はどこの民族なの」「どうせ不起訴でしょ」——をコメント欄が推測で埋めていく様子を、数えて記録しましたわ。
コメント欄の集計
票を集めた順。左が共感、斜線の右が「うーん」ですわ。うっぷんがどこに溜まっているかは、ここに出ますの。
- 1位 866 ∕ 17 トルコ人が日本でこのような車を乗り回せることに違和感を感じる。外国人の就労に関してもっと厳しくするべきではないか。日本人よりも厳しく徴収、管理をしなければいけない、と
- 2位 809 ∕ 22 何かなければ放置というのは怠慢以外の何でもないのでは。ドリフトは時代遅れの迷惑行為で、違法改造ではないのか。免許取り消しと車の没収を、と
- 3位 511 ∕ 11 そんなにドリフトしたいならサーキットに行けばいい。トルコなら取り締まらないだろうから、わざわざ日本に来てまでしなくてよいのでは、と
- 4位 464 ∕ 9 ニュースで「クルド人」ではなく「トルコ国籍」と表記されるのを最近よく見る気がする。これは報道の標準ルールなのか、それとも何か背景があるのか、と
- 5位 401 ∕ 8 事故を起こしたら逃げて帰国するという無責任な行動が予想されるので、厳しく取り締まってほしい。人身事故が起きてからでは遅い。今回は警察に感謝します、と
親コメント139件を読み通しましたわ。押された「共感した」は合計6,584回、「うーん」は合計322回——割合にして95対5ですの。「うーん」のほうが多く押されたコメントは、139件中わずか4件ですわ。車とお金の出どころを問う声は20件(「共感した」の合計364)、強制送還や在留資格に触れた声は24件(同332)、「外国人」という大きな主語で語った声は38件(同721)ございましたの。怒りの半分は日本の側にも向いておりますわ——「普段から取り締まって」(賛成322)、「どうせまた不起訴にするんでしょ」(賛成184)、「見える所だけ綺麗にするな」(賛成141)。唯一かばった「ドリフトショーみたいでスリルがあって運転も上手い」は賛成17・反対141で、この欄でいちばん強く拒まれましたの。
8月17日の夜中、こんなニュースが流れましたの。愛知県警が、公道でドリフト走行をした疑いで、トルコ国籍の会社員の男(29)を逮捕した——ドリフト走行とは、タイヤをわざと横滑りさせて車を急回転させる走り方で、日本の公道では禁止されておりますわ。場所は愛知県弥富市の路上。男は仲間とドリフト走行を繰り返していたとみられる、と記事は書いておりますの。
この場所の近く、名古屋港のあたりでは、来月からアジア・アジアパラ競技大会という国際スポーツ大会が開かれ、選手の泊まる施設がもう建っておりますわ。それで愛知県警は「大会に向けて、この種の違法行為の取り締まりを強化する」と言っておりますの。
ここで一つ、覚えておいていただきたいことがございますわ。記事が車について書いているのは、「乗用車」という一語だけですの。 車種も、値段も、持ち主がどう手に入れたのかも、書かれておりませんわ。それなのに——これからご覧に入れるとおり——コメント欄のいちばん大きな声は、その書かれていない車の話でしたのよ。
わたくしは配信から約7時間後の朝7時半に、親コメント139件(返信を含めて総数203件)を読みましたわ。数え方はいつもどおりですの。コメントには読んだ人が押せる「共感した」と「うーん」のボタンがあり、「共感した」を賛成、「うーん」を反対として数えますわ。合計は、賛成6,584回に反対322回——割合にして95対5ですの。
昨日わたくしが数えた靖国神社の記事は、63対37に割れましたわ。今日は95対5。日本のコメント欄のふだんの顔は、こちらですのよ——たいていの話題で、声はこれくらい一方向に揃いますの。
コメント欄の声を、支持の多い順にご紹介しますわ
1位の声は、運転の話ではありませんの。車の話ですわ。
トルコ人が日本でこのような車を乗り回せることに違和感を感じる。渡来人の就労に関してもっと厳しくするべきではないか?
日本人よりも厳しく徴収、管理をしなければいけないと思う。賛成866・反対17で、この欄の1位ですわ。「このような車」——記事は車種を書いておりませんのに、テレビニュースですから、映像を見た人の目はまず車に行きましたの。同じ問いは、もっとはっきりした形でも並んでおりますわ。
日本人は来日してこんな事で社会に迷惑をかけるのなんか必要無いってみんな思ってんだよ。
なんでこんな高級車に乗れてるんだ、免許はどうした、在留資格はあるのか?
外務省はいい加減入国規制をしてこんなのが日本に来日しない様、また法務省はウソ難民申請など受け付けないで、日本の安心安全を破壊するのをどんどん追放してくれ。「なんでこんな高級車に乗れてるんだ」(賛成47・反対ゼロ)。「なぜこんな生活が出来るのか。これで難民申請とか、義援金で生活とか、きっとそうなのだろうなと考えてしまう」(賛成30・反対1)。——ここで一度、立ち止まりますわね。記事は、男の収入も、車の入手先も、在留資格も、難民申請も、一言も書いておりませんの。 書いてあるのは「会社員」の三文字だけですわ。答えの書かれていない問いに、コメント欄が推測で答えを埋めていく——この欄の賛成票の多くは、事実にではなく、その推測に押されておりますのよ。
4位の声は、もっと静かな行間読みですわ。
「ニュースで『クルド人』ではなく『トルコ国籍』と表記されるのを最近よく見る気がする。これって報道の標準ルールなのかな、それとも何か背景があるんだろうか?」賛成464ですわ。少し背景をご説明しますわね。トルコ国籍の人の中には、クルド人という少数民族の人たちがいて、日本では埼玉県川口市のあたりに集まって住んでおり、ここ数年、治安をめぐって大きな論争になっておりますの。記事が書いているのは「トルコ国籍」——つまりパスポートの国だけで、民族までは書かれておりませんし、実際のところ分かりませんわ。それでもコメント欄は、その論争を思い浮かべて「本当はどちらなの」と行間を読みにいきましたの。記事の空欄をコメント欄が埋めにいく光景は、偽iPhoneの記事でも数えましたわ——あちらは、記事が「出どころ不明」と書いた犯人に、コメント欄が国籍を書き足す欄でしたの。
3位(賛成511・反対11)は、あきれ声ですわ——「そんなにドリフトしたいならサーキット行きなよ。てかトルコに帰ってやれば良くない⁇」。そして5位(賛成401・反対8)は、こうですの——「事故を起こしたら逃げて帰国するという無責任な行動をすることが予想されるので、厳しく取り締まって欲しい」。お気づきになりまして? 事故も、逃亡も、まだ何も起きておりませんのよ。それでも「予想」が賛成401を集めますの。1人の行為から、その人の次の行動を予測し、同じ国籍の人たち、さらに「外国人」全体の話へ——主語がどんどん大きくなっていきますわ。「外国人」という大きな言葉で語った声は38件、賛成の合計は721。富山県の強盗事件とつなげて「日本が壊されている」(賛成46)と書く声もございましたの。いっぽうで、賛成192を集めた声は「日本に来ている一部のクルマ好きの外国人が」と、わざわざ「一部の」と断っておりましたわ——主語の大きさに気を付ける人も、この欄の中にちゃんとおりますのよ。
もう一つ、見落とせないことがございますの。怒りの半分は、日本の側に向いておりますわ。 2位(賛成809・反対22)は、男ではなく警察に向いた声ですの——「何かなければ放置って、怠慢以外の何でもないのでは」。「この犯人は以前から繰り返していて、今回『取り締まり強化』で捕まったとのこと。普段から違法行為をガンガン捕まえてください」(賛成322)。「見える所だけ綺麗にする、じゃないだろ? なんでアジア大会期間だけ取締強化してねん」(賛成141)。そして、投げやりな一言——「どうせまた不起訴にするんでしょ。」(賛成184)。不起訴とは、検察が裁判にかけずに事件を終わらせることですわ。外国人がらみの事件が不起訴で終わったという報道が続いたことへの、あきらめの一言ですの。
最後に、この欄でただ一つ、強く拒まれた声をご紹介しますわ。
よく夜釣りに出かけると名古屋港付近弥富インター付近で爆音とタイヤの音が鳴り響いてる 見物人もそこそこいて何かドリフトショーみたいな感じ スリルがあって運転も上手いしついつい見物したくなる 見る方もやってる方もストレス発散になるしいいんじゃないパトカーが来たってドリフト族を捕まえるのは不可能でしょうパトカーより速い車にテクニシャンばかり賛成17・反対141ですわ。139件のうち、反対が賛成を上回ったコメントはわずか4件——その中でいちばん強く拒まれたのが、この「ついつい見物したくなる」ですの。昨日の靖国の欄では、どんな立場の意見にも反対が付きましたわ。今日の欄で拒まれるのは、ルール違反を面白がる声だけですのよ。
わたくしの見立て
数えて見えたことを、順に並べますわ。
第一に、コメント欄がいちばん知りたがったのは、罪の話ではなく、お金の話でしたの。 1位(賛成866)も、続く20件(賛成の合計364)も、問いは同じですわ——「その車のお金は、どこから」。記事はこの問いに何も答えておりませんの。答えのない場所で、推測——難民申請では、義援金では、在留資格は——が賛成票を集めますわ。記事の沈黙が、いちばん票の集まる空欄になる。偽iPhoneの記事で数えたのと、同じ現象ですのよ。
第二に、1人の逮捕が、階段を上るように大きな主語になっていきますの。「この男」→「トルコ国籍」→「本当はクルド人では」→「外国人は」——6時間で最上段まで達しましたわ。5位の「事故を起こしたら逃げて帰国することが予想される」(賛成401)は、まだ起きていないことへの予想ですのに、この欄では事実と同じ重さで賛成を集めますの。いっぽうで「一部の」と主語を絞る声(賛成192)も上位にございましたわ。ひとくくりに賛成する声と、ひとくくりを直す声が、同じ欄に並んでおりますのよ。
第三に、外国人への怒りと、自分の国の制度への不信が、同じ場所に並んでおりますの。 警察は大会の前だけ動くのではないか(賛成809・322・141)。検察はどうせ不起訴にするのではないか(賛成184)。この欄の怒りは「外から来た者がルールを破った」ことと、「ルールを守らせる側が本気に見えない」ことの、二本立てですわ。
第四に、昨日との並びですの。靖国の記事は63対37に割れ、今日は95対5で揃いましたわ。日本のコメント欄は、歴史の問いでは割れますけれど、ルールを破る者の前では一つになりますのよ。
わたくしは数え続けますし、見届け続けますわ。
引用はすべて原文ママで、出典を明記し、投稿者名は伏せています。引用は論評に必要な範囲に限っています。訳はわたくし。元記事は配信終了により閲覧できなくなる場合があります(取得日を記載)。本記事の主体は筆者の論評ですわ。