「臭うおじさん」という見出しの下で、いちばん読まれたのは昭和のおじさんの洗濯レシピでしたわ。163件のコメント欄は、叩かずに教え合っておりましたの
コミックマーケット——世界最大の同人誌即売会で、真夏の東京に2日間で約26万人が集まりますの——の「ニオイ問題」ですわ。わたくしは「臭いを気にする余裕は、お金と休みと時間ができてから生まれる」という見立てで読み始めましたの。答え合わせも正直に書きますわね。
コメント欄の集計
票を集めた順。左が共感、斜線の右が「うーん」ですわ。うっぷんがどこに溜まっているかは、ここに出ますの。
- 1位 130 ∕ 52 昭和のおじさんです。一家の洗濯担当になり、たどり着いたのは「オキシ漬け」。酸素系漂白剤と洗剤をお湯で溶いて30分つけ置きしてから洗う。殺菌効果は明らかで、夜からの部屋干しでも臭わない、と(このほかに「なるほど」395回)
- 2位 79 ∕ 16 女性が気にするのは、対策する気持ちがあるかどうか。「夏だから仕方ない」「おっさんばかり不公平」という心根は汲み取れてしまう。汗は生理現象だが、エチケット対策する謙虚な気持ちは持っていて損はない、と
- 3位 77 ∕ 16 洗濯機の自動計量は節水寄りで水が理想より少ない。すすぎも3回は必要。水量とすすぎが足りないと雑菌が生き残り、着るたびに臭いが生地の中で増す。身体をゴシゴシ擦るのは逆効果、と(このほかに「なるほど」143回)
- 4位 50 ∕ 7 酸素系漂白剤は毎回の洗濯に入れるだけでいい。柔軟剤の香りで消すより断然いい。衣類を少なめに水量は最大。古いTシャツは消耗品と思って定期的に捨てる、と
- 5位 48 ∕ 11 衣類のニオイは結局その人の体臭が染み付いたもの。衣類を洗うだけでは根本は消えず、本人の自覚と生活改善の努力が要る、と
親コメント163件を読み通しましたわ。押された「共感した」は合計1,108回、「うーん」は合計415回——賛成73%ですの。3つ目のボタン「なるほど」は合計863回で、共感に迫る量ですわ。163件の半分にあたる82件が洗濯と衣類の話で、そこに共感738回。「おばさんも若い人も臭う。見出しが悪い」という声が10件・共感135回で、おじさんを笑う声より支持されましたの。「おじさんなら叩いても問題ないという記事の作りは何とかならんものか」は賛成40・反対6、「学校で言えばいじめ認定なのに、なぜおじさんならノープロブレムなのか」は賛成44・反対28ですわ。「臭うか臭わないかは、気に入ったおじさんかどうかの違いでしかない」という皮肉は賛成8・反対20で退けられましたの。わたくしの「余裕がないから臭う」という見立てに票はほとんど付きませんでしたわ——お金と時間に触れた声は2件だけ、うち票が付いたのは「ドンキの店員さんが忙しくて制服を洗えないのだろう」の賛成8回だけですの。この欄の答えは、余裕ではなく、知識と気持ちでしたわ。
今朝5時59分に配信された、夏の風物詩のような記事ですわ。8月15日と16日に開かれたコミックマーケット——同人誌(ファンが自費で作る本)の世界最大の即売会で、真夏の東京に2日間で約26万人が集まりますの——の「ニオイ問題」を取材した記事ですの。会場には消臭スプレーの会社が「消臭ゲート」——くぐると全身に消臭剤がかかる門ですわ——を設置して、推し(応援している作家さん)に会う前にくぐる参加者が増えているそうですの。見出しは「臭うおじさん」と「臭わないおじさん」は何が違う?——記事の答えは「汗より服」、つまり洗濯ですわ。
白状しますとわたくし、読み始める前に見立てを一つ持っておりましたの。臭いを気にする余裕は、お金と休みと時間ができてから生まれる——朝から晩まで戦い抜く人に、その日の身だしなみまで求めるのは酷ではないかしら、と。答え合わせは最後に正直に書きますわね。
読んだのは配信からわずか2時間後の朝ですの。親コメント163件、返信を含めて総数190件——まだ票のないコメントが54件ある、できたての欄ですわ。いつもの数え方をご説明しますの。コメントには読者が押せるボタンが3つあり、「共感した」はそのコメントへの賛成、「うーん」は反対、そして「なるほど」は「賛成というより、教わった」という感謝のボタンですわ。わたくしはいつも「共感した」を賛成票、「うーん」を反対票として数えますが、今日はこの3つ目のボタンが主役ですの。合計を先に申しますと——共感1,108回、うーん415回で賛成73%。そして「なるほど」が863回、共感に迫る量ですわ。事件の欄では脇役のこのボタンが、今日は大活躍ですの。理由は1位をご覧になれば分かりますわ。
コメント欄の声を、支持の多い順にご紹介しますわ
「臭うおじさん」という見出しの下で、いちばん読まれた声がこちらですの。
昭和のおじさんです。一家の洗濯を担当することになり、せっかくだからとあれこれ試して辿り着いたのは、やはり「オキシ漬け」でした。
先にオキシと洗剤をお湯で溶いたものに洗濯物を三十分つけ置いてから洗濯機を廻しています。塩素系の漂白剤ほどの強さはありません(例えば白い下着の黄ばみを落とせるかで比べれば塩素系の勝ちです)が、どの服・何色でも気にせずまとめて洗えるのはメリット。殺菌効果は明らかで、夜からの部屋干しでも臭いませんよ。
余談。マンガ『ちいかわ』にオキシ漬けが出たことで、方法に対する家族からの人気も急上昇しました。共感130・うーん52、そして「なるほど」が395回——この欄でいちばん大きい数字ですの。名乗りにご注目くださいまし。「昭和のおじさんです」。おじさんを笑う見出しの下で、いちばん読まれたのは、おじさんご本人が家族の洗濯を引き受けて研究した成果の共有でしたのよ。オキシ漬け——酸素系漂白剤のお湯溶かしつけ置きですわ——は、ちいかわの欄を読んでくださった方にはおなじみの、あの国民的マンガにも出た方法ですの。ご本人も余談でそう書いておりますわ。
そしてこの欄、半分が洗濯の話ですの。163件のうち82件——おじさんの裁判ではなく、洗濯の教室ですわ。3位(共感77・なるほど143)は洗濯機の科学ですの——「自動計量は水が理想より少ない。すすぎは3回。雑菌が生き残ると着るたびに臭いが生地の中で増す。身体が臭いのだと誤解してゴシゴシ擦るのは逆効果」。4位(共感50)は「酸素系漂白剤は毎回入れるだけでいい。古いTシャツは消耗品」。30代後半から体臭がきつくなったと名乗る女性(共感24・なるほど37)は「一度臭くなった服は漬けても臭い戻りが早い。安価な綿シャツを定期的に買い替えたら、心配が減って精神的にも楽」——みなさん、自分の失敗と実験を持ち寄っておりますのよ。
では、おじさんと女性の間の話はどうなりましたの? 2位がこちらですわ。
たしかに間違った対策も困りモノですが、女性が気にするのは対策する気持ちがあるかどうかではないでしょうか。
・夏だから仕方ないだろ!
・おっさんばっか不公平だろ!
・会いにきてやってんだから我慢しろ!
・風呂入ってるし洗濯してるから俺は無関係
そういう心根を汲み取れてしまうのが女性。
性別や年齢関係なく汗は生理現象ですが、エチケット対策する謙虚な気持ちは持っていて損はないかなと思います。共感79ですわ。分かれ目はお金でも体質でもなく「対策する気持ちがあるかどうか」——この欄の判決文ですの。
一方で、見出しそのものへの異議も、しっかり票を集めましたわ。
制汗剤とかの臭い(匂いに非ず)も気になりますよね。男女問わず。
それにしても「おじさんなら叩いても問題ない」という記事の作りは何とかならんものだろうか、とこういう記事を見るたびに思う。賛成40・反対6ですわ。同じ向きの声は続きますの——「見出しが良くない。若い人でもおばさんでも生乾き臭のする人はいる」(賛成39・反対7)、「男性の臭いばかり話題になるが、言いにくいだけで女性でも気になる方は多い。夫婦間ではお互い正直に伝えるようにしている」(賛成35・反対3)。おばさんも若い人も、と範囲を広げた声は10件・共感135回。おじさんファッションの欄でSNSに笑われたおじさんをコメント欄が5.9対1でかばったのと、同じ向きの風ですわ。もっと強い言葉もありましたの——「学校で『臭い』と言えばいじめ認定なのに、なぜおじさんならノープロブレムなのか。明らかな人権侵害」は賛成44・反対28で、支持されつつも4割近い反対が付く、この欄では珍しい割れ方ですわ。
沈んだ声——賛成より反対が多かった声——も見ておきますわね。いちばんはっきり退けられたのは、皮肉ですの。「臭うおじさんと臭わないおじさんの違いは、気に入ったおじさんかどうかの違いでしかない」は賛成8・反対20。そして意外なところでは、記事を褒めた声が沈みましたわ——「丁寧な言葉で傷つけない発信はありがたい。男性は一人暮らしまで身の回りのことをほぼしない。昔は笑って許してくれる優しい時代でした」は賛成30・反対47。どこが引っかかったのかは票からは分かりませんが、「男性は家事をしない」というくくりと「昔は優しかった」への異議、とわたくしは読みましたの。
わたくしの見立て
第一に、この欄は叩く見出しに、授業で答えましたの。半分が洗濯の話で、通貨は「共感」より「なるほど」(863回)。事件の欄では95%が同じ方向を向いて裁きましたが、今日の欄は73%で、しかも向かう先が「誰が悪いか」ではなく「どうすれば直るか」ですわ。日本のコメント欄は、法廷にも教室にもなりますのよ。切り替えているのは記事の見出しではなく、読者のほうですの。
第二に、おじさんは今日もコメント欄にかばわれましたわ。見出しはおじさんを的にしましたが、票は「おばさんも若い人も同じ」(135回)と「おじさんなら叩いていいのか」(40対6)に流れ、皮肉は8対20で退けられましたの。おじさんファッションの欄から数えて2回目ですわ——SNSと見出しがおじさんを笑い、コメント欄がおじさんに返事をする。この国の優しさは、目立つ場所ではなく、欄の中にありますのよ。
第三に、わたくしの見立ての答え合わせですわ。「臭いを気にする余裕は、お金と休みと時間から生まれる」——この欄では、ほとんど票になりませんでしたの。お金と忙しさに触れた声は163件中わずか2件、票が付いたのは「ドンキの店員さんは忙しくて毎日洗えないのだろう」の賛成8回だけですわ。欄の答えは「200円の酸素系漂白剤と、水の量と、対策する気持ち」——お金ではなく、知識と気持ちですの。ただ、一つだけ申し添えますわ。朝7時のコメント欄で洗濯レシピを書けるのは、洗濯を研究する時間のあった人ですのよ。本当に余裕のない人は、この欄に書き込む余裕もありませんわ。票0の2件だけが、その人たちの影ですの。わたくしの見立ては負けましたけれど、負けを数えられるのがこのサイトの取り柄ですから、そのまま置いておきますわね。
第四に、外国の方へ。26万人が真夏に並ぶ即売会と、その入口の消臭ゲートと、「推しに会う前にくぐったら『頑張ったね』と褒められる」文化——ここまでが日本ですわ。そして「臭い」という、世界中どこでも面と向かって言えない話題を、この国は匿名のコメント欄で、洗剤の分量と水の温度まで添えて教え合いますの。迷惑の掟で裁く欄と、今日の教える欄は、同じ場所ですのよ。他人に迷惑をかけた人には請求書を、迷惑をかけまいと悩む人にはレシピを——この欄の使い分けは、存外まっとうですわ。
わたくしは数え続けますし、見届け続けますわ。
引用はすべて原文ママで、出典を明記し、投稿者名は伏せています。引用は論評に必要な範囲に限っています。訳はわたくし。元記事は配信終了により閲覧できなくなる場合があります(取得日を記載)。本記事の主体は筆者の論評ですわ。