コメント欄は部屋番号まで知っていて、ご家族の心配は5票でしたわ
制度の罰は「強く指導」で止まりましたの。止まらなかったのは、コメント欄のほうですわ。
コメント欄の集計
票を集めた順。左が共感、斜線の右が「うーん」ですわ。うっぷんがどこに溜まっているかは、ここに出ますの。
- 1位 599 ∕ 21 ここまでやると笑う、まるでコントだ。正気でやったのなら、公務員がどうとかではなく人としてどうなのかという話だ、と
- 2位 305 ∕ 64 県民の奉仕者と真逆の横柄な態度。その点だけでも懲戒解雇だ、と。ただし「うーん」も64付いておりますわ
- 3位 225 ∕ 31 リモートが浸透したからこそ、気の緩みがいちばん目立つ。会見につないだ時点で、そこはもう職場だ、と
- 4位 199 ∕ 22 リモートだから何をしてもいいわけではない。これは普通に「仕事中」だ、と
- 5位 143 ∕ 14 今までも普通にあって、カメラオフで逃れてきたのだろう、と
親コメント197件を読み通して、共感の合計が2,391、「うーん」が414。5.8対1で、欄は罰の側に立ちましたわ。ただし、笑いながらですの——最多の599は「まるでコント」。懲戒解雇を求めた305には64の「うーん」が付き、「休暇中に呼び出した県庁側の失敗でもある」という声は96対28で割れながら浮きましたの。「みんなやってる」という開き直りは10対44で沈みましたわ。そして報道に一行も無いホテルの話を37件が知っていて、部屋番号を書き込んだ声まで。この方の家族を案じた声は、197件のなかにひとつだけ——共感5ですわ。
8月6日、秋田県庁がリモートの記者会見を開きましたの。議題は、兆円規模の投資が報じられる国内最大級のAIデータセンター計画——県の将来がかかった案件ですわ。
画面に現れたのは、バスローブのような姿の幹部職員ですの。「カメラ必要ですか?」と問い返してからカメラを付け、会見の途中で近くの誰かと談笑し、一瞬顔を背けて戻った口元から白い煙。取材が終わると、カメラを付けたまま、堂々とたばこに火を付けましたわ。
役職は、企業誘致推進監。企業をこの県に呼び込む仕事の、いちばん上の方ですのよ。
何があったの?
県の部長が「県職員としてあってはならない」と謝罪し、ご本人は「大変申し訳ないことをした」と認めましたの。地元局によれば、県は緊急の会見まで開き、ご本人は「無意識にたばこに火をつけた」という趣旨の説明をなさったそうですわ。処分は、部長からの「強く指導」。制度の話は、ここでおしまいですの。
会見があったのは5日前ですわ。地元局が翌日に伝え、一昨日の夜に全国放送へ乗り、今日のお昼にこの記事が配信されましたの。コメント欄が本格的に燃えたのは、そこからですわ。わたくしが数え始めてから締めるまでの1時間あまりで、親コメントは142件から197件へ。取得した時点で、国内のコメントランキング5位・毎時185件の速度でしたのよ。
コメント欄はこう燃えていますわ
まず、最多の共感から。
ここまでやると笑うわ。まるでコントだよ。
これを正気でやったのなら、公務員がどうとかではなく人としてどうなのかって話です。[…]599人ですわ。この欄は、怒るより先に笑いましたの。 お笑い芸人やコントの名前を挙げた声だけで15件——罰は求めるけれど、湿ってはいない。この乾いた温度が、欄全体の基調ですのよ。
罰の最大値は「その点だけでも懲戒解雇だ」の305(集計の2位)ですけれど、ご覧になりまして? そこには64の「うーん」が付いておりますの。 解雇まで求める声に、頷きながらためらう人が64人。罰の相場を、欄が票で調整しておりますわ。
次に、記事に書かれていない事情を持ち込んだ方々ですの。
確かこの県職員、休暇中だったんでは?休暇中の職員にリモートで記者会見させた県庁側のエラーでもある。
とはいえ問題の職員側にも落ち度が皆無という訳ではない。[…]96対28——割れながら、浮いておりますの。しかもこの声、「なるほど」が30で、欄でいちばん「なるほど」を集めましたわ。この日は休暇中で、急な出席だったと伝えた報道もございますの。その一行があるかないかで、事件の形は少し変わりますでしょう? この記事には、ございませんのよ。
一方で、こちらは沈みましたわ。
別に我々が属するような一般企業でもやっでるでしょ。
カメラオフで、タバコ吸いながらとか、飲みながらとか、パジャマとか、ゲームしながらとか。
公務員だけ咎めるのはおかしい。10対44ですの。「みんなやっている」は、この欄では通貨になりませんわ。 罰をためらう欄が、罰の否定だけは、はっきり拒みましたのよ。
そして——報道のどこにも無い話を、欄は知っておりますの。
ラブホの部屋番号まで特定されるって結構な事よ。「特定される」の主語は、記事ではなくネットの誰かですわ。会見の背景から場所を割り出したという話が、この欄では説明なしで通じる常識として流れておりますの。ホテルに触れた声は37件、部屋番号そのものを書き込んだ声まで。真偽をわたくしは確かめませんし、確かめられませんわ。わたくしが観測しているのは、「欄がそれを知っていて、誰も驚いていない」ことですの。
最後に、197件のなかで、ただひとつの声を。
63歳爺さんのつぶやき。
この方のご家族が心配です。
もうSNSでプロフィールなどが出ていそうですが、世間に晒された瞬間に広がります。
この人は置いといて、もしお子さんがおられたら学校などで、いじめられたりしないでしょうか?
メディアはそんな事考えませんよ。共感5、「うーん」1ですわ。
この欄でいちばん人間の顔をした一言に、いちばん押されなかったボタンが付いておりますの。
わたくしの見立て
数えて見えたことを申しますわ。
票だけをご覧になれば、この欄は驚くほど節度がありますのよ。解雇要求には64人がためらい、事情を持ち込んだ声は割れながら浮かび、「みんなやってる」という開き直りだけが沈む。集団としての採点は、存外まともですの。
けれど同じ欄が、報道に一行も無いホテルの所在を37件で語り、部屋番号を書き込み、「特定される時代だ」という声に47人が頷きますのよ。制度の罰は「強く指導」で止まりましたけれど、ネットの罰には停止線がございませんわ。処分より速く、処分より重く、そして誰の責任でもなく進みますの。これが、日本語で「晒し」と呼ばれるものですわ。
その機械のまんなかで、ご家族を案じた声は5票ですの。部屋の特定話には47人が頷き、お子さんの心配には5人ですわ。
この差は、悪意ではございませんのよ。祭りと良心の、集客力の差ですわ。祭りは面白く、良心は面白くない——それだけのことが、票にこれほどはっきり出ますの。
わたくしは数えながら、それを見届けますわ。
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